BBC This World 2012 Inside the Meltdown
BBCによる福島第一原発事故のドキュメンタリー映像.
事故発生から数日間の緊迫した事態を描写したものである.
原子炉内の燃料棒冷却,ベントによる格納容器破損回避,また,核燃料プールへの注水などを順に追っている.
私が最近確認することができた『近藤駿介による最悪シナリオ資料』は3.25付で,4号機の使用済み核燃料プール火災を端緒に複数原子炉のメルトダウン・環境への大規模な放射能放出の懸念をあらわしたものだった.3.25以前においても,少なくとも菅直人首相(当時)は,(どれほど明確であったかは議論の余地があるものの)同様の認識を持っていたようだ.
『福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描』
平成23年3月25日 近藤駿介
(内閣府)原子力委員会 委員長
http://www.asahi-net.or.jp/~pn8r-fjsk/saiakusinario.pdf
The most impressive scene as follows...
38分頃.
I thought withdrawal was out of question.
If they withdrew, 6 reactors and 7 fuel pools would be abandoned.
Everything melts down.
Radiation tens of times worse than Chernobyl will be scattered.
- Naoto Kan (former Prime Minister)
私自身は,『撤退はありえない』と,もともと思っていました.
つまり,撤退するということは,6つの原子炉と7つの使用済み核燃料プールを,いわば,放棄する,と.
放棄してどうなるかというとですね,全部がメルトダウンしてですね,
まさに,チェルノブイリの何十倍という放射性物質が撒き散らされることになると.
- 菅直人(前総理大臣)
ところで,現在の福島第一原発だが,4号機の使用済み核燃料プールは耐震補強工事が実施されたものの,燃料棒そのものの取り出し(どこかへ移送?)は『2年以内を目標に開始』するとされている.
東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(概要版)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111221c.pdf
何らかの事由により燃料棒の冷却ができなくなり,燃料棒そのものが『燃焼』する事態になった場合について,アーニー・ガンダーセン氏の本に描写がある.
少し引用してみよう.
- 作者: アーニー・ガンダーセン,岡崎玲子
- 出版社/メーカー: 集英社
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NRCは使用済み核燃料プールが乾ききり,発火することを非常に心配していました.あまりにも熱くなって金属が燃える現象です.水では消火できません.そのような状態なると,水をかければ事態は悪化しています.水から発生した酸素がジルコニウムを酸化させるうえに,水素が発生して爆発します.最悪の事態です.そのため,私は「四号機の使用済み核燃料プールが煮詰まれば,(ステロイド剤で)強化されたチェルノブイリになる」という表現を用いたのです.10〜15年分の核燃料が大気中で燃えるという世にも恐ろしい状況です.
(70,71ページから抜粋)
電源トラブルなどでプールの冷却機能喪失から復帰へのプロセスと,地震による倒壊など*1でプールが全面的に倒壊し瓦礫に埋もれた後での対処では,難易度が桁違いに異なるものであるということは,素人ながら理解できる.
後者は対処不能であるかのような言説も少し耳にしているが,どんなものだろうか.『水の遮蔽なしで使用済み燃料に近付いたら致命的』,というのは本当なのだろうか?
また,使用済み燃料の崩壊熱は3.11時点よりは少なくなっているはずだが,現時点ではどの程度なのだろう.
いずれにせよ4号機のプールが特別に注意を要する状態であることに変わりはない.
The situation is ongoing...
*1:テロも?